先日、とあるラノベの技法書を読んでいたら、興味深い記述が目についた。
「とある」とか言っておきながら思い切り商品リンクを貼っているが(アフィブログだからね、仕方ないね) まぁそれはそれとして。
目についた記述というのは、「変身願望」における性差について言及した箇所である。
詳細な引用は避けるが、要するに
男子の変身願望=別の存在に変わりたい
女子の変身願望=かわいくなりたい、綺麗になりたい
という旨で、そこに起因して、エンタメの男子向け・女子向けの違いも出てくるのだと。
男子の変身願望は「別の存在に変わりたい」で、女子の変身願望は「綺麗になりたい/かわいくなりたい/大人(お姉さん)になりたい」だという。
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月20日
ヒーローものやホビーアニメの性差も、そこに起因するのだとか。
以下、ツイッターで吐き出した初見を、トゥゲッターまとめ風に補足を加えつつ並べていく。
○男子向けの「別の存在になる」変身
男子がメインターゲットの仮面ライダー、スーパー戦隊は全身すっぽり変わる。さらに遡って月光仮面、七色仮面、快傑ハリマオ、紫頭巾に鞍馬天狗。みんな顔を隠して活躍するヒーロー
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月20日
男子向けヒーローの「変身」は姿を隠すので、「変装」の意味合いが強い。元が誰なのか分からなくなる変身は、男子の「別の存在になって活躍したい」という気持ちが反映したものと言える。
女子向けでも、タキシード仮面や怪盗シンドバッド、ジュリオなど「男性が変身した、ヒロインと比肩しうる存在」は仮面であることが多いのは興味深い。
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月20日
モモレンジャーをはじめ、「男子向けヒーローの女子メンバー」は男性と同じスタイルに合わせるのに、その逆はないのである。
○かわいくなりたい/綺麗になりたい女子の「変身」
翻って女子がターゲットとなると、「変身」は「着替え」の様相を呈す。
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月20日
セーラー戦士、おジャ魔女、プリキュア、ミラちゅーはいずれも、服装あるいは髪型が派手になるが、顔は丸出しである。
海外でも、ワンダーウーマンやブラックウィドウはマスクしてない。
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月20日
クリィミーマミやマジカルエミ、キュアエースやまほプリチームは「別の存在になる(大人のお姉さんになる)」タイプの変身だが、やはり顔は隠さず丸出しである。
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月20日
小学生の頃『怪盗セイント・テール』を見ていて、
「服装を変えただけでは正体がモロバレなのでは?」
と疑問に感じていたが、女子とは、変身しても自分の存在を完全に隠したくはないものなのだなぁ。
しかし、「女子は顔を出して着飾る変身がしたいもの」と考えると、うら若き乙女が半分擬人化されたブタに変身する『とんでぶーりん』の特異さ・オリジナリティが改めて思い起こされるのであるヨ。
視聴率は後に同枠(毎日放送/TBSの土曜夕方)で放映された『ウルトラマンティガ』より良かったとか……。
○顔を半分隠す変身
全身を隠す男子の「変身」と、自己の存在を保持したまま着飾る女子の「変身」。この2つはまったく別であるように思えるが、共通する部分もある。
男子がターゲットになると、顔を出すにしても、上半分か下半分を隠すタイプが多い。
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月20日
タツノコヒーローなんか分かりやすい例で、キャシャーンは口を隠す。ポリマー、ガッチャマン、イッパツマンはバイザーで目を覆う。ヤッターマンやヤットデタマンは目元を隠す。
これには記憶違いがあって、ヤットデタマンもゴーグルで目を隠していた。ヤッターマンは穴あきアイマスクで、怪傑ゾロと同じスタイルなんですな(あとはゼンダマン、オタスケマンもそのスタイル)。
ゼンダマンはOPの導入からして、明らかにゾロがモチーフだった。
「顔を半分隠すヒーロー」は、男子向け女子向け双方にいくつも実例が存在する。ただ、女子向けの場合、パピヨンマスクで目元を隠すか前掛けで口周りを隠すタイプが多く、男子向けに多いゴーグルやバイザーで目を隠すタイプはほとんどいない。
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月21日
同じ「顔を半分隠すヒーロー」でも、
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月21日
男=顔を露出するにしても半分まで
女=顔を隠すにしても半分まで
という風に、男女で意味合いが違っているのが面白い。
顔を半分隠す変身ヒロインといえば、ラ・セーヌの星、ナイルなトトメス、ポワトリン、セーラーV……と、実例挙げてて気づいたけど、女子向けの場合、変身ヒロインは基本、ヘルメットかぶらないんだよね。頭には帽子やリボンやティアラ等の装飾品。
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月21日
逆に男子向けはヘルメット(+バイザー)が多い。
電波人間タックル、白鳥のジュン、ベルスターはヘルメット着用してるが、彼女らは「男子向けヒーローの女子メンバー」。作品が男子向けだと、女子メンバーも男子向けヒーローのメソッドで変身する(ベルスターは変身じゃなくて召喚型ヒロインだが)
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月21日
趣旨から外れるが、そういえばガンダムのライバルキャラは顔半分隠しが多い。シャア・アズナブル(兜型マスク)、クワトロ・バジーナ(サングラス着用で目元隠す)、クロノクル・アシャー(顔下半分マスク)、シュバルツ・ブルーダー(目元だけ露出した覆面)、ゼクス・マーキス(シャアと同じ兜型マスク)などなど、そしてこの人ルイン先輩。
なぜガンダムには顔半分隠す輩が多いのか。これは日を改めてアプローチする必要がありそうだ。
○合体変形は男のロマン! か?
ロボットアニメが男子向けになるのは、「ロボットを操縦して戦う」行為が男子的な変身願望の一種(操縦という手段を通じてロボット=別の存在になる)で、女子のそれと互換性がないからと言える。
— あんみつ/くるみ院/ (@AnmitsuK) 2017年6月20日
ジャンルとして、女子向けのヒーローものはあるが、女子向けのスーパーロボットアニメは無い(ただし、ロボットアニメには、女子を取り込む措置が施された作品も多い)。
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月21日
これは「女子向けのスーパーロボットアニメ」ではなく、「女子向けアニメで放映された、スーパーロボットアニメのようなエピソード」。
○それじゃもう「個人差」でどっちでもよくなるじゃない
男女の変身願望についてアレコレ考えていて、ふと思い出したエピソードがある。
女の子がゴーストドライバー(仮面ライダーゴーストの変身ベルト)の玩具を欲しがるも、親から「女の子だから駄目」との理由で買ってもらえない映像に対し、ネットユーザーから多くの批判の声があがったこの一件。その批判はおおむね「仮面ライダー(男子向け作品)を好きな女の子は、ぜんぜん変なんかじゃない」という旨だったが、私もこれには全面的に賛成する所存だ。
そもそも、男子向け/女子向けという区分は、作る側の理屈ですからね。
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月22日
「たぶんこの作品を見るのは男の子が多いだろう」
「たぶん男の子はこういうのが好きだろう」
「たぶんこの作品を見るのは女の子が多いだろう」
「たぶん女の子はこういうのが好きだろう」
と思って作っているだけの話で
作っている側が客層として意識していないからといって、その作品を好きになってはいけないなどという道理は無い。我が国には思想の自由があるのだ。ターゲット層とのズレなど知ったことか。
それに、「変身願望」の視点からすれば、むしろ当然の嗜好とも言えるのだ。
あれからまた考えてみたのだが、「変身願望」の観点からすると、「仮面ライダーが好きな女の子」と「プリキュアが好きな男の子」に(かなり乱暴ながら)説明がつきそうな気がする。
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月21日
TSに関する話など難しいことが絡むデリケートな領域だから、あまり偉そうなことは言えないのだが
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月21日
女子の変身願望「綺麗になりたい/かわいくなりたい」とは、
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月21日
「基本になる自分という存在を保持しながら、装いを替えたい」
と言い換えることができる。
だから、スーツで体を包んで装いを替えるスーパー戦隊や平成仮面ライダーも、女子の変身願望を充たす対象になり得る。
「プリキュア好きな男の子」の場合も、変身願望の側面で考えると説明がつくのではないか。
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月21日
男子の変身願望は「別の存在に変わりたい」。つまり女の子に変わりたいという願望を抱くこともあり得るのだ。
そう考えると、「仮面ライダー好きな女の子」も「プリキュア好きな男の子」も、全然おかしなことじゃない。変身願望に則った正当な嗜好だ。
— あんみつ/くるみ院/影の魔人 (@AnmitsuK) 2017年6月21日
まぁ、「変身願望」だけで全てが説明できるわけでもないのだが。一つの考え方ってことで。