外山滋比古の著作は、東大・京大の学生にひろく読まれているらしい。実際手にとればさもありなん、おもしろくてタメになる。そのうえわかりやすい。読めばひとつ学問を修めた気分になる(気分になった、で放置するか人生に活かすかは個人差がある)。本書もタイトルそのままの内容で、論文・散文・手紙など、あらゆる「書く」行為へのアドバイスが詰まっている。学生・社会人問わずおすすめしたい一冊。
<公式サイトより>
世界で起こる問題を誰もが分かる言葉で解説し、総選挙後には政治家への突撃取材でお馴染みの池上彰。しかし、その八面六臂の活躍も、NHK時代の“左遷”から始まった。記者としてのキャリアを順調に積み重ねてきたが突如、「週刊こどもニュース」キャスターへの異動を命じられる。それでも腐らず、複雑なニュースを小学生にも分かるように噛み砕く語り口が好評を得て、ついに国民的番組に押し上げる。この成功体験から、分かりやすさは武器になり、専門を持たないことは分野の垣根を越える強みだと気づき心機一転、フリージャーナリストの道へ――。
異動、転身とは、現状を脱し新天地に飛び込むという意味で「越境」であり、積極的な行為だ。幾多の領域を跨いで学び続ける著者が、その効用と実践法を説く越境のススメ。
テーマは「越境」。自らの半生やリベラル・アーツの重要性などを、脱線を交えつつ語っている。
ビジネスパーソン向けということだが、まさに色々な分野にも応用できる考え方が書かれている。それはアニメや漫画といった、オタク活動でもそうだ。
日頃SNSを眺めていて、この人、その好きな気持ちをバネに「越境」すれば、もっと楽しいことがいっぱいあるだろうになぁ……と思うことが多い。アニメ語り・漫画語りの場で、
「私はコレが好きで、コレ意外には認めない!」
「私の価値観はこうだから、コレが駄目、許せない!」
というふうに、自らの好きなジャンルに固執してそこに閉じこもり、ほとんど精神病の様相を呈している人をよく見かける。何とももったいないと思う。
好きなことや興味のあることは、自分を縛るものではなく、バネにしてより高く跳ぶエネルギーなのだよ。そんなことを再認識させられた。
2月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:648
ナイス数:31
池上彰の世界から見る平成史 (角川新書)
読了日:02月05日 著者:池上 彰
人を見る目 (新潮新書)の感想
ビジネス本のような書名が示す通り、軽めのエッセイに仕上がっている。いつもの冷徹な視点の歴史探求を期待すると薄味で物足りないかもしれないが、古今東西の名文を引用しつつ昭和史の場面を当てはめていくという試みも、これはこれで面白い。
読了日:02月16日 著者:保阪 正康
思考の整理学 (ちくま文庫)の感想
SNSで、ときたま「物事はこれこれこういう風に考えよう」というライフハック的な発言が、おおいに拡散されバズることがある。そういう類の発想は、発言者が思い至るより前に、おおよそ全て本書に記されていると言ってよかろう。初出が1983年なのだから驚きだ。ネットで阿呆なことを書いて炎上した経験のある人は、本書を読んで参考にした方がよい。
読了日:02月20日 著者:外山 滋比古
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